不動産会社さんと物件探しをしていると、「囲い込み」という言葉を耳にする機会があるかもしれません。
不動産業界で働いている人は誰もが知っている、この「囲い込み」とは一体何のことでしょうか。
目次
囲い込み行為とは?
自宅を売却する時、多くの方は大手の不動産会社や最寄駅の駅前にある不動産会社などに売却の相談をし、売却活動の依頼をします。
依頼を受けた不動産会社は頑張って買主さんを探すことになります。
自社のホームページやSUUMO等のポータルサイト、チラシなどを活用して買主さんを探すことになりますが、合わせて「レインズ(REINS)」という、不動産業者のみが閲覧できる物件サイトに物件情報を掲載する必要があります。
レインズに物件情報を掲載すると、日本中の不動産業者がその物件情報を確認することができるため、自社で物件探しの依頼を受けているお客様に対して、レインズに掲載されている販売中の物件を紹介することができます。
レインズに掲載されている物件をお客様にご紹介して、「是非内見をしたいです!」となったら、レインズにその物件を掲載している売主さん側の不動産会社に「弊社のお客様が◎◎マンションの内見を希望されているので、内見日程の調整をさせてください」という旨の連絡をします。(未だにFAXで連絡することがほとんどです・・・)
その際に、売主さん側の不動産会社さんから以下に挙げるようなお断りのお返事をいただくことがあります。
- 既にお申し込みが入り、商談中なので案内できません。
- お荷物がまだ残っているので、片付けるまでは案内してほしくないと言われています。
- 売主さんがコロナを気にしているので、落ち着くまで案内しないでほしいと言われています。
- 売主さんから前日の内見依頼は断れと言われています。
- 売主さんから絶対に購入するっていう人じゃないと内見させるなと言われています。
- うちのスタッフが全員予定が埋まっているので案内できません。
- (空室の物件にも関わらず)売主さんに担当者の立ち合いが必須と言われているので、週末は予定が埋まっていて案内できません。
もちろん、それらが事実の場合もあるのですが、売主さん側の不動産会社の担当者さんが「嘘」をついていることも多々あります。
この「嘘」をついて、他社からの内見依頼を断る行為のことを「囲い込み」といいます。
なぜ嘘をついてまで囲い込むのか?
売却の依頼を受けた物件の買主さんを自社で見つけることができると、売主さん・買主さんそれぞれから仲介手数料を受け取ることができるため、他社が買主さんを見つけてきた場合と比べると、売上が2倍になるのです。
例えば5,000万円で成約した場合、売主さんから約150万円、買主さんからも約150万円で、合計300万円もの仲介手数料を得ることができるのです。
売主さん・買主さん両方から手数料をいただく取引のことを「両手取引」といいます。
1件の物件の取引で売上が2倍になるため、多くの不動産会社は売却の依頼を受けると、必死になって自社で買主さんを探します。
あらかじめ断っておきますが、自社で努力して買主さんを見つけてくることは決して悪いことではありませんし、普通に起こり得ることです。
ただ、両手取引にしたいがあまり、囲い込み行為をして、他社からの内見依頼を嘘をついて断ったり、そもそもレインズに物件を掲載しないような不動産会社が非常に多いのが現実です。
誰もが知っている大手の不動産会社の中でも、組織的に囲い込みを行っている会社はたくさんあります。
恐ろしい話ですが、私自身、ほぼ毎日のように囲い込みされている物件に出会います。
囲い込みはなぜ悪いのか?
売主さんからすれば、結果的に買主さんが見つかるから別にいいんじゃないの?と思われる方もいるかもしれませんが、実際にその物件に興味を持っているお客様がいるのに内見をしてもらえないと、売却機会の損失に繋がりますし、もしそのお客様が値引き交渉をしなくても満額でもいいから購入したい!という方だった場合は経済的な損失にも繋がりかねません。
以前、弊社のお客様が満額でもいいから絶対に買いたい!という物件があったのですが、売主さん側の不動産会社に悪質な囲い込みをされ、結果的に数百万円も値引きした価格で(おそらく両手取引で)売れてしまい、弊社のお客様が購入することができなかったという事例もあります。
売主さんは囲い込みされていることに気付けない
また、売却を依頼した不動産会社がそういった「囲い込み」の行為をしていることに、売主さんがなかなか気付くことができないというのも問題です。
物件への問い合わせや内見の依頼は、売却を依頼している不動産会社に直接入ってくるので、売主さんはいつ、どれだけの問い合わせや内見依頼があったのかを把握することができないのです。
当然、売主さんには良い顔をして接しますので、実際には問い合わせや内見依頼がたくさん来ていても、売主さんには「なかなか内見が入りませんね〜。そろそろ値段下げますか?」などといったお話をしているかもしれません。
売主さんが100万円値段を下げたところで、不動産会社の売上は3%分の3万円しか下がらないので、値段を下げることで両手取引ができるお客様を見つけやすくなるのです
なぜ囲い込みは無くならないのか?
悪質な行為であることは明らかなのにも関わらず、なぜ囲い込みは無くならないのでしょうか?
今の不動産業界の仕組み上、両手取引自体は禁止されていないため、どうしても売上が2倍になる両手取引にしたいという気持ちが出てきてしまいます。
不動産会社で働く多くの営業マンは毎月の売上ノルマに追われているので、そういう気持ちになってしまうのも無理はありません。
また、両手取引の方が、買主側の不動産会社とのやり取りや交渉がなくて済むので、売主さん、買主さんそれぞれと直接やりとりができ、取引をコントロールしやすいといったこともあるかもしれません。
国土交通省などの監督する立場の方々も、囲い込みの実体を把握しきれておらず、そこまで厳しく監視されていないことも大きな要因かもしれません。
囲い込みは無くせるか?
両手取引を禁止すれば良いという意見もありますが、それはそれで、「買い側の不動産会社」と「売り側の不動産会社」に分社するといったような方法を取るような会社も出てくるでしょうし、あまり現実的ではないと考えます。
日常的に未だにFAXでやり取りをしている不動産業界においてもIT化は着実に進んできています。いわゆる不動産テックなどとよばれるベンチャー企業も数多く出てきました。
不動産は法律的なハードルも高いですし、非常に高額な取引なので、メルカリのように気軽に個人同士で売買できるようになるまでにはまだまだ時間がかかると思いますが、ITの力を借りて、もっと取引を透明化し、家を売りたい人が安全に納得できる価格ですぐに物件を売ることができ、家を買いたい人が多くの選択肢の中から自分の求める条件にピッタリ合う物件に出会え、スムーズに購入できる世界が近い将来、実現できると良いなと思っています。
私たちもその世界の実現に向けて、一歩ずつ進んでまいります。