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住まいの学び場サムネ

旧耐震基準の物件は住宅ローン控除が使えない?

2022.11.25

年末時点で残っている住宅ローンの残額に応じて、所得税や住民税の控除が受けられる、住宅ローン控除(住宅ローン減税)という制度があります。

この住宅ローン控除という制度を適用するためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。

その条件のうちの一つに物件の「築年数の条件」があります。

登記簿謄本上の新築の日付で判断


住宅ローン控除の適用を受けるためには、その物件の登記簿謄本に記載されている「新築の日付」が「昭和57年(1982年)1月1日」以降の日付になっている必要があります。

登記簿謄本は法務局の窓口やウェブサイトから誰でも取得することができますが、不動産会社の担当者さんに依頼すれば取得していただけるかと思います。

出典:SUUMO


登記簿謄本が確認できなくても、SUUMO等のサイトに記載されている「完成時期(築年月)」が「1982年1月以降」になっていれば基本的には大丈夫です。

昭和56年12月31日以前の物件はどうなる?

では、登記簿謄本上の新築の日付が昭和56年(1981年)12月31日以前の物件は住宅ローン控除を利用することができないのでしょうか?

じつは「耐震基準適合証明書」という証明書を取得することができれば、住宅ローン控除を利用することができるのです。

耐震基準適合証明書はこのようなA4サイズの書類です。


住宅ローン控除が利用できる物件が全て新耐震基準ということではないという点にも気をつけなければなりません。

少しややこしいのですが、その建物の「建築確認申請の日付(確認済証発行年月日)」が「昭和56年(1981年)6月1日」以降か以前かで新耐震か旧耐震の判断は分かれます。

建築確認申請というのは「これからこういう建物を建てます」と、役所に申請することを言います。

建築確認申請の日付(確認済証発行年月日)は台帳記載事項証明書という、区役所や市役所の建築指導課の窓口で取得することができる書類に記載されています。

建築確認申請の日付は台帳記載事項証明書という書類で確認ができます。


建築確認申請をしてから建物の工事がスタートしますので、昭和57年(1982年)1月1日以降に完成した物件で、住宅ローン控除が使える物件であっても、昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認申請がされている物件は「旧耐震基準」で建てられている可能性があるのです。

耐震基準適合証明書はどうやって取得する?

では、この耐震基準適合証明書はどのようにすれば取得することができるのでしょうか?

◎ 木造戸建の場合

木造戸建の場合は、1981年6月1日以降に建築確認申請がされた物件であれば、耐震基準適合証明書の発行機関による物件の資料の確認や現地での確認によって、耐震基準適合証明書が発行できる可能性があります。

それよりも古い旧耐震基準時代に建てられた物件でも、耐震補強工事が実施されていて、一定の基準を満たすことができれていれば耐震基準適合証明書が取得できるような物件もありますが、非常にハードルが高いのが実情です。

現状のままでは耐震基準適合証明書が取得できないような物件であっても、物件のお引き渡し後に耐震診断を実施し、適切な耐震補強工事を実施することによって、一定の耐震基準を満たすことができれば耐震基準適合証明書を取得することができる場合があります。(これも実際は、かなりハードルが高いですが…)

物件のお引き渡しの際に、司法書士さんが、物件の所有権を売主さんから買主さんに変更する、「所有権の移転登記」という手続きを行うのですが、その際に今現在の住所で登記するか(旧住所登記)、新しく購入した物件の住所で登記するか(新住所登記)を選択することになります。

物件のお引き渡し後に耐震補強工事を実施して、耐震基準適合証明書を発行する場合は旧住所登記をする必要があります。

新住所で登記をしてしまうと、耐震補強工事を実施しても住宅ローン控除を適用することができなくなってしまうので、注意が必要です。

原則として、住民票は実際に住み始めた後に異動させるものなので、厳密にルールに従うと、所有権の移転登記は「旧住所登記」で行うことになりますが、新住所で登記をした方が将来的に購入した物件を売却することになった時に、住所の変更登記の手続きが不要になり、その分の費用がかからなくて済むため、新住所にて登記を行う方もいます。

ただし、物件のお引き渡し後にリノベーションの工事を実施する場合は、物件の引き渡しから数ヶ月間は新しい住まいに住むことができないので、基本的には「旧住所登記」をしていただくのが原則になります。



◎ マンションの場合

1981年の5月31日以前に建築確認申請された旧耐震基準のマンションであっても、マンション全体で適切な耐震補強工事が実施されていて、一定の基準を満たしている物件の場合は、耐震基準適合証明書を取得できることがあります。

ただし、マンションの耐震補強工事には多額のコストがかかってしまうため、残念ながら、きちんと耐震補強工事を実施している旧耐震基準時代の物件は少ないのが現状です。

耐震補強工事を実施していないマンションであっても、以下のような条件を満たしている場合は耐震基準適合証明書を取得できる可能性があります。

  • 5階建以下
  • 鉄筋コンクリート造
  • 壁式構造(柱や梁でなく、壁で建物を支える構造)
  • 地形が良い
  • 設計図書の閲覧が可能

壁式構造についてはこちらのページで詳しく解説していますので、よろしければご一読ください。

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マンションリノベーションにおける壁のお話
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また、過去に同じマンションで耐震基準適合証明書が発行された実績があれば、問題なく発行できる可能性が高いので、耐震基準適合証明書の発行する会社の発行実績などを確認するのも一つの手です。

耐震基準適合証明書の発行には費用がかかりますが、旧耐震基準時代の物件の耐震基準適合証明書の発行は、新耐震基準時代の物件よりも高額になるので注意が必要です。

発行する会社にもよりますが、旧耐震基準時代に建てられた中古マンションの場合、15万円ほどの費用がかかります。

一方で、過去に発行実績がある物件の場合は現地の調査などが不要になるため、安く発行していただけることが多いです。

まとめ

住宅ローン控除を利用することで、数百万円の所得税や住民税の控除を受けることができます。

気に入った物件が築古の物件だった場合は、契約書にサインをする前に、必ず耐震基準適合証明書が発行できるかどうかを確認するようにしましょう。

また、耐震基準適合証明書を発行する会社によって、適合証明書の発行可否の回答が異なる場合があります。(本来はあってはならないことですが、実際はよくあります…)

もしある会社さんに依頼をして発行不可と判断されてしまった場合でも、いくつかの会社に依頼してみると発行できる可能性もありますので、諦めずに検討してみましょう。